3Dプリンターは、一番高い組み合わせを買った。安く買ったら積むと思ったから
2025年11月のタイムセールで、Bambu Lab A1 Comboを58,800円で買った記録。25,000円のA1 miniで十分だと思っていたのに、なぜ倍以上の組み合わせを選んだのか。買う前に消えなかった不安と、その確認作業が茶番だったことも含めて残す。
結論:一番安いモデルを避けて、一番高い組み合わせを買った
Bambu Lab の A1 に、AMS lite が付いた Combo モデル。2025年11月のタイムセールで、58,800円だった。
最初に検討していたのは A1 mini である。同じセールで3万円を切っていた。「まずは試しに」で手が出る値段である。それを蹴って、倍以上の組み合わせを選んだ。
理由は性能ではない。安く買うと、絶対に積むと思ったからである。
以下は、そこに至るまでの記録である。
欲しいとは思っていたが、後処理の大変さで止まっていた
3Dプリンターという機械があること自体は、ずっと前から知っていた。いつかは欲しいな、と漠然と思ってもいた。
ただ、買うところまでは行かなかった。理由は三つある。
使い方が分かりづらそうだった。 これは中身を調べたうえでの判断ではなく、印象である。難しそう、で止まっていた。
値段が高かった。 これも当時の印象である。
そして三つ目が、いま思うと一番効いていた。後処理が大変そうだった。
当時よく見ていたのは、3Dプリンターで戦艦を作っている人や、治具を作っている人の動画だった。すごいなあ、と思って見ていた。ただ、その人たちが使っていたのはレジンで作るタイプの3Dプリンターで、洗浄や二次硬化といった後処理の工程が、どう見ても面倒そうだった。
作りたい気持ちより、そのあとの手間のほうが大きく見えていた。
賃貸だったので、そもそも置く場所がなかった
加えて、これまで賃貸で暮らしていた。
3Dプリンターを設置して、置きっぱなしにしておけるような場所がない。稼働音も気になる。買う買わない以前に、置き場所の問題で検討が終わっていた。
その後、家を建てた。場所の問題は解決した。
それでも買わなかった。
理由が入れ替わっただけである。本当に自分に使えるのか。そんなに作るものがあるのか。この二つが残っていた。
不満とアイデアが溜まってから調べ直したら、知識が古かった
家を建ててから、ある程度の時間が経った。
住んでみると、細かい不満が出てくる。ここが使いにくい、ここに固定するものがない、市販品でちょうどいいものがない。そういうものが少しずつ溜まっていく。同時に、こうすれば解決するのに、というアイデアも溜まっていく。
そこでまた欲が出てきて、調べ直した。そして、自分の知識がかなり古いことを知った。
Bambu Lab というメーカーが、初心者向けの機種を出していた。しかも安い。私が止まっていた理由のうち、「使い方が分かりづらそう」と「値段が高い」の二つが、調べた時点でほぼ消えていた。
きっかけになった具体的な出来事は、正直もう覚えていない。不満とアイデアが一定量を超えたところで、また調べ始めた。 それだけである。
最後の障壁は「自分のパソコンでデータが作れるのか」だった
買う気はもう強くなっていた。それでも、まだ引っかかっていることがあった。
そもそも自分のパソコンで3Dデータが作れるのか。
当時使っていたのは 2018年製の Core i5 の MacBook Air である。購入時にメモリだけ16GBにしてあったとはいえ、3Dソフトがまともに動くのかが分からなかった。ここだけは確認しておこうと思い、Fusion 360 をインストールして、起動するか、何か作れるかを試した。
作ったのは、たしかただの箱である。
この確認が、正直まったく意味をなしていない。
本当に確かめるなら、実際に作りたいものの形をひととおり作ってみるべきだった。額縁の断面でも、治具の当たり面でもいい。それをやらずに、箱を出して満足している。
つまりこれは検証ではなく、買える理由を探す作業だった。 欲しい気持ちのほうが先に来ていて、「動いたから大丈夫」という結論を出すための手続きをしていた。
そして落ちがある。買ったあと、Fusion 360 は結局使っていない。
理由は、個人用の無償版に商用利用の制限があると知ったからである。作ったものをいずれ売るかもしれないと考えていたので、そこで手を引いた。
制限の中身を、いま改めて確認しておく。
個人用 Fusion 360(現 Autodesk Fusion)の無償版の条件
- 非商用目的で、個人的に設計・製造のプロジェクトを行う場合に限る
- Fusion の使用による年間収益が1,000米ドル未満であること
- 機能が制限された版であり、ライセンス期間は3年(期限後も再申請で継続可)
なお、2024年1月に製品名が「Fusion 360」から「Autodesk Fusion」に変更されている。 出典:個人用 Fusion 360 | 限定無償版(Autodesk)
ここで注意したいのは、「1,000ドル未満なら売っていい」と単純に読めるわけではないという点である。金額の条件とは別に「非商用目的」という条件が並んでいて、収益が出ていなくても商用目的なら対象外という解釈が公式側から示されている。販売を前提にするなら、素直に商用版を契約するのが筋である。
※この条件は記事執筆時点のもの。実際に使う人は必ず公式の最新条件を確認すること。
私の場合は、売る可能性を残したかったので離れた。いま主に使っているのは FreeCAD である。
つまり、最後の障壁を越えるために動作確認したソフトを、その後一度も使っていない。
作りたかったのは、ディズニーランドの入口に飾ってあるポスターの額縁である
作るものがあるのか、という不安のほうは、いくつか候補があった。実際に作れるかは別として、思いついているものが何個かあった。
そのなかで、購入の決め手になったものが一つある。
ディズニーランドの入口に飾ってある、あのポスター。あれの額縁である。
中身のポスターにあたるものは、市販のポストカード集を買って持っていた。
出典:講談社『ディズニー テーマパークポスター ポストカード集』 Amazon商品ページ
ただ、これに合う額縁がない。仕方なく100円ショップのフォトフレームに入れて飾っていた。サイズが合っていないので、余白が出る。
このポストカードにぴったり合う額縁を作りたい。正直なところ、これが作りたくて買った。
結果から書くと、購入後にソフトを覚えながら試行錯誤して、作り上げることはできた。その過程は別の記事に書く。
完成したものが、これである。

完成した額縁。ポストカードの寸法に合わせて設計しているので、余白が出ない。上部の飾りは、市販品では手に入らない部分である。
A1 miniで十分だと思っていたが、A1 Comboを買った
買う決意はできた。次は、何を買うかである。
最初の考えはこうだった。まずは安いので一回お試しに買えばいい。 A1 mini で十分だろう、と。
ところが調べていくうちに、別の意見をかなり見ることになる。A1 mini と A1 は機能は同じで、違うのは造形できるスペースの大きさ。大きいほうが後々後悔しない。
数字にするとこうである。
| A1 mini | A1 | |
|---|---|---|
| 最大造形体積 | 180 × 180 × 180 mm | 256 × 256 × 256 mm |
一辺の差は76mmだが、体積で見ると約2.9倍になる。
値段は倍くらいする。実際に作れるかも、使うかも分からないものに、どこまでお金をかけるべきか。ここでかなり迷った。
さらに、A1 シリーズには AMS lite という、フィラメントを自動で供給してくれるシステムがある。あると相当楽になるらしい。ただし、当時の私にはこれがかなり高いものに見えていた。A1 mini が一台買えてしまうくらいの感覚である。
紛らわしいので補足。 単に「AMS」という名前の製品は別に存在する。P1S などに付くのがそちらで、A1シリーズに付くのは AMS lite である。調べているときに、ここを混同しかけた。
そして最終的にはセールで買うことになるのだが、セールのときは AMS lite 付きの Combo モデルのほうが割引率も高かった。 全体の値段はもちろん上がる。それでもお得感は出る、という状態になっていた。
結果として私は、悩んだ選択肢のなかで一番高い組み合わせを買っている。 2025年11月、タイムセールの A1 Combo、58,800円である。
セールの構造を、あとから調べ直してみた
当時は「安くなっている」としか見ていなかったので、記事を書くにあたって当時のプレスリリースを掘り返した。
出典:Bambu Japan株式会社 プレスリリース(2025年11月17日) 【史上最安値に挑戦‼】Bambu Lab ブラックフライデー感謝祭で一番お買い得!3Dプリンター最大58%OFF
構造はこうなっていた。
- ブラックフライデーセール本体:2025年11月10日 11:00 〜 12月5日 23:59
- その中でさらにタイムセールが4回。11月11日/18日/25日/12月2日、いずれも11:00開始
- タイムセールの目玉商品は P1S単体・A1 Combo・A1 mini Combo の3つ
私が買ったのは、このセール期間中のタイムセールである。つまり二段階安くなっていた。日付は11月25日、第三弾のタイムセールだった。
そして、通常のセール価格のほうを見て、当時気づいていなかったことが一つ分かった。
| 商品 | 通常価格 | セール価格 |
|---|---|---|
| A1 mini(単体) | 52,800円 | 29,500円 |
| A1(単体) | 70,800円 | 53,100円 |
A1単体のセール価格が53,100円。私がタイムセールで買った AMS lite 付きの Combo が58,800円。差は5,700円である。
厳密には比較している時点が違う(片方はタイムセール価格)ので、正味の差額がこの通りとは言い切れない。それでも、A1 mini が買えるくらい高いと思っていた AMS lite が、この組み合わせではほとんど誤差のような値段で付いてきていたことになる。
「セールのときは Combo のほうが割引率が高い」という当時の感覚は、正しかった。ただし私はその理由を数字で理解していたわけではない。 ただ、お得感がある、と思っていただけである。
なお、私の記憶では、このときの A1 mini はもっと安く、25,000円くらいに見えていた。プレスリリース上の A1 mini 単体のセール価格は29,500円である。タイムセールでさらに下がっていた可能性はあるが、裏を取れる資料が見つからなかった。確認できるのは29,500円までなので、そちらを正としておく。
なぜ一番高いほうを選んだのか
決め手は三つある。どれも「性能が良いから」ではない。
一つめ。安く買うと、積むと思った。
A1 mini は3万円を切っていて、簡単に買える。でも、この値段で買っていたら、私はきっと買ったまま放置していた。 最初の勉強期間は必ずしんどい。そこを乗り越えるには、やるしかない状況を自分で作る必要があった。値段は、そのための装置である。
二つめ。造形範囲は、使いこなせるようになってから効いてくる。
積まずに続けられたとして、その先で「もっと大きいものが作りたい」は必ず来る。そのときに範囲が足りないと後悔する、と考えた。
三つめ。AMS lite は、手間を減らすために買った。
勉強するだけでもしんどいのに、設定や造形の準備まで面倒だったら、それこそ積む可能性が高い。トライアンドエラーの回数を稼ぐために、手間の側を金で削ったということになる。
58,800円である。なんとか元を取るぞという気持ちで、セールが始まってすぐに買った。
実際に買ってみて、この判断はどうだったか
しばらく使ってきた時点での答えを書く。
AMS lite は、絶対に一緒に買ったほうがよかった。
フィラメントのロードや片付けが格段に楽になる。あまり使いはしないが、マルチカラーでの印刷もできるようになるので、汎用性も上がった。ここは迷った意味がなかったと思っている。
造形範囲も、A1で正解だった。
A1 mini では印刷できないものが、実際にあった。そして何より、一番作りたかった額縁が、180mm角では1ピースで作れない。 分割して設計することになり、確実に複雑になっていた。
覚えたてのソフトで、いきなり分割設計に取り組んでいたらどうなっていたか。たぶん完成させられずに投げていた。 最初に作りたかったものを完成させられないまま止まったら、そのあと続いていたとは思えない。
一番高い組み合わせを買った理由は「積まないため」だったが、結果として積まなかった理由は、そこではなく「最初の一個が完成したから」だったように思う。
一番大きかったのは、AIとの距離が変わったことかもしれない
ここまでは機械の話である。ただ、買ってよかったことを挙げるなら、もう一つ、想定していなかったものがある。
FreeCAD を覚える過程は、そのまま AI と長時間やりとりする過程だった。分からないことを聞いて、返ってきた手順どおりにやってみて、うまくいったりいかなかったりする。それを延々と繰り返した。
その結果、自分の中のAIに対する認識が変わった。
これは使えるな、と思うところもあれば、全然違うやんけ、というところもあった。 具体例は個別の記事で書くとして、大事なのは、どちらも自分の手で確かめた結果だという点である。誰かのレビューや、SNSで流れてくる評判ではない。
接し方と、性能の限界。この二つを、勉強と試行錯誤のあいだに掴んだ気がしている。
そして、ここが今につながっている。
- 3Dプリンターを買わなければ、FreeCAD を覚えていない
- FreeCAD を AI と格闘しながら覚えなければ、GPT を有料版にしていない
- 有料版を使い倒していなければ、このサイトもない
3Dプリンターを買った理由は額縁だった。買ったことで一番変わったのは、AIの使い方だった。 買う前の私には、まったく予想できていない。
そして、作っているのはほとんど家の不満を消す治具である
ここまで書いてきたとおり、私は額縁を作るために3Dプリンターを買った。
ところが、買ってからいま手元にあるものを並べてみると、装飾のために作ったものは数えるほどしかない。
猫がコンセントをかじらないようにするケース。壁に穴を目立たせずにエアコンのリモコンを掛けるホルダー。給気口のフィルターホルダー。ペットドア。戸棚のロック。カメラを吊るす治具。
ほとんどが、家に対する苦情処理である。
しかも発注主の内訳を見ると、半分近くが猫だった。監督が肩書きではなく実態だったことになる。
買う前に不安だった「そんなに作るものがあるのか」の答えは、あったである。ただし、想定していた種類のものではなかった。作りたいものがあるから買ったのに、実際に手を動かしているのは、住んでみて初めて見つかった不満のほうだった。
ここからは、その試行錯誤の記録と、作ったものを一つずつ上げていく。